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-次世代医療を語る-研究科横断型教育プログラム(H24)

次世代の医療は、医学研究科だけでなく、さまざまな分野の学生が担って行く可能性があります。今回は、その代表として理工学、細胞生物学、地域・社会学からのアプローチを取り上げ、医療の動向を議論したいと思います。本プログラムを聴講した様々な分野の学生が、次世代の医療に繋がるヒントを得て、思いもかけない連携が生まれるかもしれません。それは、この上なく喜ばしいことです。

■ 研究科横断型プログラムについてのポスター.pdf

理工学、細胞生物学、地域・社会学の3領域からの医療への取り組みを専門家に紹介していただき、討論をします。

<次世代の生体情報取得機器開発>

10/3. 杉本 直三(京都大学大学院 医学研究科 人間健康 科学系専攻:教授)

画像処理・解析による診断と治療の支援

10/10. 酒井 晃二(京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻:講師)

画像解析と診断との融合:MRIの例を中心に

10/17. 椎名 毅(京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻:教授)

次世代の検査機器開発;超音波と光による生体機能・性状のイメージング

 

<次世代の生体医療材料の開発とその臨床応用>

10/24. 岩田 博夫(京都大学 再生医科学研究所:教授)

人工材料への細胞の接着

10/31. 森本 尚樹(関西医科大学形成外科:講師)

細胞、細胞成長因子を用いた皮膚再生

11/7. 山本 雅哉(京都大学 再生医科学研究所:准教授)

新しいDrug delivery systemの開発

11/14. 藤林 俊介(京都大学 医学部附属病院整形外科:講師)

生体活性チタンを用いた新しい骨関節疾患治療

 

<次世代の細胞生物学的アプローチ>

11/21. 前川 平(京都大学 医学部附属病院 輸血細胞治療部:教授)

京都大学における細胞治療・再生治療開発への挑戦

11/28. 門脇 則光(京都大学 医学部附属病院 血液・腫瘍内科:准教授)

がん免疫療法としての細胞療法

12/5. 青井 貴之(京都大学 iPS細胞研究所:教授)

細胞治療に向けたiPS細胞の現状と課題

12/12. 細田 公則(京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻:教授)

糖尿病、肥満症、メタボリックシンドロームの次世代医療

 

<医療の新しい社会還元の模索>

12/19. 山田 実(京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻:助教)

転倒予防を通した新たな地域との関わり

12/26. 伊藤 達也(京都大学 医学部附属病院 探索医療センター:助教)

治験、臨床試験を実施する際の行政との関わり

1/16. 仙石 慎太郎(京都大学 細胞-物質統合拠点:准教授)

幹細胞の品質評価・安定培養技術とイノベーション

1/23. 宮野 公樹(京都大学 学際融合教育研究推進センター:准教授)

新しい医療のための異分野融合ダイナミクス

 

ポケット・ゼミ「ヒト胚子の3次元立体模型を作製しよう」;全学共通科目(後期)に提供

ヒトは受精後38週で生まれます。そのうち3-8週は器官を形成する時期で、胚子期と呼ばれます。わずか数週間の間に胚子はダイナミックな変化を遂げ、ヒトらしい形態となります。20世紀前半には、その外表や内部器官の立体的な変化について研究するためには、貴重なヒト胚子から組織連続切片を作成して内部観察を行ったり、プラスター模型を作成して立体を再構築する等、大変な労力を必要としました。本ゼミでは、同様のアプローチを現代風に行います。すなわち高解像度のMRI画像を用いて撮像したヒト胚子の連続2次元画像を出発材料として、コンピューターを用いて胚子全体あるいは特定器官の立体像の設計図を作成し、3次元プリンターを用いて模型を作製します。

ヒトの発生を知りたい、もの作りに興味がある、コンピューターグラフィックスに関心がある、生命倫理についても考えてみたい等、全学部からの幅広い興味を持つ学生の参加を期待します。

なお、開講初年度につき、模型がうまく出来るかは、学生の創意工夫と努力と運によります。

ゼミは、山田重人教授、杉本直三教授の協力を得ます。

■ ポケットゼミHP(外部リンク)

神楽所さんの卒論がHead Face Medicineに掲載

神楽所さんの卒論「外耳の動きをdifferential growthで説明する」がHead Face Medicineに掲載されました。

『ヒト胚子期に外耳は顔の側方を頭側に大きく移動する』と、多くの発生学の教科書に記載されている。 この動きは”移動 (migration)”ではなく ”偏差成長 (differential growth)” で説明できることを、われわれ は、MRIデータを用いて、個体の中心に基準点をおき、位置変化の絶対値を検討することで明らかにした。 実際の観察では、目や口といった顔の表面にある解剖学的基準をもとに相対的な動きとしてとらえため、外耳は移動してみえるのである。Head Face Med. 2012 Feb 1;8(1):2.

  • 外耳の動きが成長差によって説明できるかどうかを検討
  • 動きの評価のために、2 つの異なる基準軸を選択
  • 下垂体とC1を基準軸; 外耳は主に横方向に移動し、頭側には動かない
  • 表面ランドマーク(眼と口を基準軸); 外耳は尾側外側腹領域から眼、口の間に移動
  • 外耳が眼や口などの顔の他のランドマークとの相対的な位置関係がある場合、外耳は頭側で動いているように見える
  • 結果は、外耳と内耳を含むすべての解剖学的ランドマークの動きが、Differential growthによって説明可能なことを示す

3. Kagurasho M, Yamada S, Uwabe C, Kose K, Takakuwa T, Movement of the external ear in human embryo, Head Face Med. 2012 Feb 1;8(1):2, doi: 10.1186/1746-160X-8-2

Abstract

External ears, one of the major face components, show an interesting movement during craniofacial morphogenesis in human embryo. The present study was performed to see if movement of the external ears in a human embryo could be explained by differential growth. In all, 171 samples between Carnegie stage (CS) 17 and CS 23 were selected from MR image datasets of human embryos obtained from the Kyoto Collection of Human Embryos. The three-dimensional absolute position of 13 representative anatomical landmarks, including external and internal ears, from MRI data was traced to evaluate the movement between the different stages with identical magnification. Two different sets of reference axes were selected for evaluation and comparison of the movements. When the pituitary gland and the first cervical vertebra were selected as a reference axis, the 13 anatomical landmarks of the face spread out within the same region as the embryo enlarged and changed shape. The external ear did move mainly laterally, but not cranially. The distance between the external and internal ear stayed approximately constant. Three-dimensionally, the external ear located in the caudal ventral parts of the internal ear in CS 17, moved mainly laterally until CS 23. When surface landmarks eyes and mouth were selected as a reference axis, external ears moved from the caudal lateral ventral region to the position between eyes and mouth during development. The results indicate that movement of all anatomical landmarks, including external and internal ears, can be explained by differential growth. Also, when the external ear is recognized as one of the facial landmarks and having a relative position to other landmarks such as the eyes and mouth, the external ears seem to move cranially.

廣瀬さんの修論がAnat Recに掲載されました。

廣瀬さんの修論_ヒト胚子期の肝臓の形態形成がAnat Recに掲載されました。

AR-Highlight紹介記事 >>

隣接器官が肝臓形態形成に影響をおよぼす
  • 肝臓の形態形成は、隣接する臓器や組織の影響を強く受ける。
    • -CS16;左心室は左内側 – 尾側に発達し、左内側領域にくぼみを形成
    • CS16-CS19腹側領域に臍によるくぼみの形成
    • CS17 -CS19;肝臓の頭側の両側に隆起が形成
    • CS20:背側-尾側領域に右副腎にるへこみ
    • -CS23;背側左内側領域に胃の痕跡
  • 肝臓の体積は CS14 -CS23 にかけて指数関数的に増加。
    • CS17まで;背腹軸と左右軸に沿って優先的に発達し、
    • CS17-CS19頭尾軸に沿って発達
    • CS19以降;全方向に発達
  • 横隔膜の分化、胚の体軸の延長、生理学的臍帯ヘルニアなどが計測データに影響
  • データは、肝臓の発達と隣接臓器の形態形成を時間的,空間的に理解するのに有用
肝臓の形態形成(CS15-CS23)

胚子期において肝臓は腹腔内最大の実質器官であり、造血・代謝を担い、胚子や胎児の成長に大きく影響を与えている。しかし胚子の肝臓の発生、特に形態の変化に関しては現在ほとんど知られていない。そこでMR顕微鏡によって撮像された約1200例の胚子MR画像のうちCarnegie Stage(CS)14~23の67例を用いて、胚子期の肝臓の形態学的解析、形態計測学的解析、及び肝内血管系の解析を行った。

形態学的解析では胚子における肝臓及び周辺器官である心臓・肺・胃・後腹膜器官の立体画像を作成し、肝臓の形態学的変化を観察した。その結果、肝臓はCSと連動して周辺器官による陥凹や平面の形成、およびその消失という特徴的な形態変化を起こしていることが明らかになった。肝臓は頭側では心臓と接してり、CS17・18において心陥凹を形成する。心陥凹はCS20で消失し、CS22・23では横隔膜により隆起が形成される。背側では胃と接しており、CS15から胃陥凹を形成している。胃陥凹は胃の発達に伴って胃全体を覆うように変化する一方、十二指腸球部によりCS19から平面を形成する。背側右方ではCS20以降副腎陥凹が形成される。また腹側ではCS17・18に臍陥凹が形成されるが、CS20には消失する。一方で肺、左側副腎、後腎、生殖腺は肝臓に隣接しているが、形態学的な影響は明らかでない。これらの結果から、各CSにおける肝臓の形態とその変化を詳細に知ることができ、また肝臓は心臓・横隔膜・胃・右副腎の形態を反映していることがわかった。これは肝臓を観察することで肝臓だけでなく周辺器官の形成不全や形態異常を発見できることを意味する。

形態計測学的解析では計測した肝臓の容積・断面積・3次元的分布、及び胚子の体積・腹部断面積・Trunk Height(TH)の全てにおいて、CSが進むとともに値が増加した。また、各CSにおける肝臓の縦径に対する横径及び厚みの比はCS14から17では値が増加、CS17から19では減少する傾向がみられた。肝臓の縦径に対するTHの比を計算するとCS14から17においてはほぼ一定であるが、CS17から19において急激に増加し、しかしCS20から23では再び変化が小さくなる。これは肝臓はCS17までは主に横断面における平面状の発生が進むに対して、CS18からは頭尾方向への発生が顕著である事を意味する。これらの結果から、肝臓の発生における計測基準を設け、より明確に肝臓の発生の様子を表すことができたと考えられる。

肝内血管系の解析では、各CSにおける主要な肝内血管の形成状態とその位置関係を観察した。CS17以降では約70%の胚子において左・中・右肝静脈が見られ、血管形成においてもCSとの相関が見られた。本論文では胚子期における肝臓の発生及び周辺器官との関係を詳細に表すことができたといえる。将来的には妊娠初期の胎児診断における重要な基礎的データとなると考えられる。

1. Hirose A, Nakashima T, Yamada S, Uwabe C, Kose K, Takakuwa T, Embryonic liver morphology and morphometry by magnetic resonance microscopic imaging ,  Anat Rec (Hoboken). 2012 Jan;295(1):51-9., doi; 10.1002/ar.21496

Abstract

Embryonic liver has a unique external morphology and quantitative morphometry, based on magnetic resonance imaging data of human embryos from the Kyoto Collection of Human Embryos. Liver morphogenesis is strongly affected by the adjacent organs and tissues. The left ventricle develops to the left medial-caudal side, which results in the formation of a depression at left medial region and a prominence bilaterally at the cranial surface of the liver between Carnegie Stage (CS)17 and CS19. An imprint of the stomach that formed at the dorsal left-medial region of the liver became more marked with development until CS23. A depression induced by the umbilicus formed at the ventral region of the liver between CS16 and CS19. An indentation caused by the right adrenal gland formed at the dorsal-caudal region of the liver surface from CS20. Morphometric analysis revealed that the volume of the liver increased exponentially from CS14 through CS23. The liver developed preferentially along the dorsoventral axis and right/left axis until CS17, along the craniocaudal axis between CS17 and CS19, and then in all directions after CS19. Several important developmental phenomena, such as differentiation of the diaphragm, the extension of the body axis of the embryo, and the physiologic herniation of the intestine into the umbilical cord, may affect morphometric data. These data contribute to a better understanding of liver development as well as the morphogenesis of adjacent organs, both temporally and spatially, and serve as a useful reference for fetal medicine and prenatal diagnosis.

細胞検査士合格のお知らせ

先日行われた細胞検査士の2次試験で、細胞診断トレーニングコース初年度卒業生1名が合格しました。おめでとうございます。

布村さゆりさんです。

トレーニングコース初年度で、あまり十分な教育はできなかったように思っていますが、入職後の職場で、しっかりした細胞診教育を受けられ、また本人もそれに応じて努力されたものと思います。

今後の活躍を期待いたします。

第51回日本先天異常学会学術集会で発表

第51回日本先天異常学会学術集会で発表しました。

 

2011年7月22日(金)-24日(日)(東京)

ヒト胚子期における隣接器官による肝臓の形態形成への影響(廣瀬あゆみ他)

ヒト胚子期における脳室の形態計測学的解析(白石直樹、中島崇他)

 

遺伝医学合同学術集会 2011で発表

京都大学百周年時計台記念館;2011 6/16-6/19

“京都コレクション“を用いたヒト胚子3次元立体像 (Virtual Human Embryo)の作成

ヒト胚子MRI画像を用いた胃の発生の形態計測学的 解析 (海外憲人他)

ヒト胚子期における脳室の形態計測学的解析(中島崇、白石直樹他)

 

第100回 日本病理学会総会

2011年(平成23年)4月28日(木)~30日(土)(横浜)

 

Virtual Human Embryo を用いたヒト胚子の観察

ヒト胚子 MR 画像からの 3 次元立体像の作製

 

細胞育成学実践論を実施

平成23年2月14,16,18日(月、水、金)、細胞育成学実践論が行われました。

再生医療を展開する人材育成を目的に行われた実習ですが、今回はその基礎として下記の3項目を行いました。人間健康科学科の他、附属病院分子細胞治療センター、iPS研究所のスタッフの協力を得て充実したカリキュラムとなりました。

1.無菌性細胞製造実習ー細胞培養の基礎を学ぶ

  • バイオハザード対策キャビネットの使用法
  • 培養液調製
  • 付着細胞剥離
  • 細胞数カウント
  • 細胞播種
  • 細胞観察
  • 付着細胞剥離
  • 細胞数カウント
  • 倍加時間算定

2.品質管理ー

  • エンドトキシン測定オリエンテーション
  • エンドトキシン測定実践

3.CPC管理

検査技術専攻の他、リハビリテーション科学、看護科学専攻の修士、学部生計8名が参加しました。

実施場所:人間健康科学科 培養室)実施場所:分子細胞治療センター)実施場所:iPS研究所 FiT)

 

.pdf 細胞育成学実践論実施要項

2010年度;修士論文 (廣瀬、中島)

ヒト胚子期における周辺臓器による肝臓の形態形成への影響
廣瀬あゆみ

胚子期において肝臓は腹腔内最大の実質器官であり、造血・代謝を担い、胚子や胎児の成長に大きく影響を与えている。しかし胚子の肝臓の発生、特に形態の変化に関しては現在ほとんど知られていない。そこでMR顕微鏡によって撮像された約1200例の胚子MR画像のうちCarnegie Stage(CS)14~23の67例を用いて、胚子期の肝臓の形態学的解析、形態計測学的解析及び肝内血管系の解析を行った。形態学的解析では胚子における肝臓及び周辺器官である心臓・肺・胃・後腹膜器官の立体画像を作成し、肝臓の形態学的変化を観察した。その結果、肝臓はCSと連動して周辺器官による陥凹や平面の形成、およびその消失という特徴的な形態変化を起こしていることが明らかになった。肝臓は頭側では心臓と接しており、CS17・18において心陥凹を形成する。心陥凹はCS20で消失し、CS22・23では横隔膜により隆起が形成される。背側では胃と接しており、CS15から胃陥凹を形成している。胃陥凹は胃の発達に伴って胃全体を覆うように変化する一方、十二指腸球部によりCS19から平面を形成する。背側右方ではCS20以降副腎陥凹が形成される。また腹側ではCS17・18に臍陥凹が形成されるが、CS20には消失する。一方で肺、左側副腎、後腎、生殖腺は肝臓に隣接しているが、形態学的な影響は明らかでない。これらの結果から、各CSにおける肝臓の形態とその変化を詳細に知ることができ、また肝臓は心臓・横隔膜・胃・右副腎の形態を反映していることがわかった。これは肝臓を観察することで肝臓だけでなく周辺器官の形成不全や形態異常を発見できることを意味する。形態計測学的解析では計測した肝臓の容積・断面積・3次元的分布、及び胚子の体積・腹部断面積・Trunk Height(TH)の全てにおいてCSが進むとともに値が増 加した。また、各CSにおける肝臓の縦径に対する横径及び厚みの比を計算するとCS14から17では値が増加、CS17から19では減少する傾向がみられた。肝臓の縦径に対するTHの比を計算するとCS14から17においてはほぼ一定であるが、CS17から19において急激に増加し、しかしCS20から23では再び変化が小さくなる。これは肝臓はCS17までは主に横断面における平面状の発生が進むに対して、CS18からは頭尾方向への発生が顕著である事を意味する。これらの結果から、肝臓の発生における計測基準を設け、より明確に肝臓の発生の様子を表すことができたと考えられる。肝内血管系の解析では、各CSにおける主要な肝内血管の形成状態とその位置関係を観察した。CS17以降では約70%の胚子において左・中・右肝静脈が見られ、血管形成においてもCSとの相関が見られた。本論文では胚子期における肝臓の発生及び周辺器官との関係を詳細に表すことができたといえる。将来的には妊娠初期の胎児診断における重要な基礎的データとなると考えられる。

1. Hirose A, Yamada S, Takakuwa T et al, Embryonic liver morphology and morphometry by magnetic resonance microscopic imaging , Anat Rec (Hoboken). 2012 Jan;295(1):51-9.  (概要)

ヒト胚子期における脳神経管の形態計測学的解析 
中島崇

ヒト胚子の脳室立体像

本研究では、ヒト胚子期の脳神経管及び脳室の形態学的特徴の変化を発生段階の指標であるカーネギー発生段階(CS)ごとに形態計測学的に解析し、発生過程を定量化した。MR顕微鏡で撮像された1204体の胚子MR画像の中で、外表形態及び脳、脊髄に明らかな異常が見られない胚子合計177個体を用いて、脳神経管の平面画像と脳室の平面・立体像を作成し、解析を行った。脳神経管は、マクロ形態を用いて前脳、中脳、菱脳に区分し脳胞長を計測した。脳室は、各CSの胚子が一方向から観察できる頭尾軸を設定し、脳室線、体積、幾何学的図形への近似による計測を行った。脳神経管の計測では、脳胞背側長、腹側長はCS18からCS23の間は増加し、背側の方が増加量が4.2倍多かった。前脳、中脳、菱脳に区分し比較すると、背側、腹側とも前脳の増加量が最も多く背側は腹側の3倍以上であった。これらの結果は、胚子期の脳胞発生の特徴である終脳の急速な増大を反映していると考えられた。 側脳室の側面から計測した背側線、腹側線は、CS16からCS23の間は大きく増加し、特に背側はCS20からCS23の間では9.10mmと著明に増加した。体積もCS16からCS23の間は大きく増加し、特にCS20からCS23の間では94.87mm3と著明に増加した。側面から見た背腹線の円弧への近似では、CS16からCS18の間は中心角は背側、腹側とも増減がほぼ見られず半径のみが増加し、CS18からCS23の間では中心角、半径は背側、腹側ともに増加した。これらの結果は、終脳が「CS19になると頭側方向に大きくなり、CS22、23には間脳全体を覆い形態的にも湾曲し大脳半球の”回転”も起こり始める」というこれまでの知見に合致すると考えられた。側脳室の定量的評価は、胚子期の終脳実質部分がそれほど発達せず側脳室の計測は終脳の発生変化を反映すると考えられることから、有用であると考えられた。第4脳室の側面から計測した背側線、腹側線は、CS16からCS23の間は背側は3.01 mm、腹側は2.20 mmを推移し大きな変化は見られなかった。頭側から観察した計測値はCS16からCS18の間は左右、背腹最大長とも増加したが、CS18からCS 23の間では左右長は増加したが、背腹長は増減はほぼ見られなかった。体積はCS16からCS18の間は14.50mm3増加し、CS18からCS 21の間では6.77mm3減少し、CS 21以降は再び増加した。これらの結果は、CS17頃から顕著になる橋屈がCS 20、21では小さくなることを反映していると考えられた。 本研究で得られた結果は、胚子期の脳神経管の発生を精確に定量化し、胚子期の脳神経管の発生を評価する基準値になる可能性を示した。今後、個体数を増やしさらに精確性を増すことで、胎児早期診断の発展に貢献することが期待される。

2. Nakashima T, Hirose A, Yamada S, Uwabe C, Kose K, Takakuwa T, Morphometric analysis of the brain vesicles during the human embryonic period by magnetic resonance microscopic imaging, Congenit Anom (Kyoto). 2012 Mar;52(1):55-8, doi; 10.1111/j.1741-4520.2011.00345.x (概要), [OpenAccess]

4回生から約3年かけた力作になりました。英語論文として発表することもできました。ご苦労様でした。