胎児初期の腎臓では、右と左の高さにすでに差がある
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胎児初期の腎臓では、右と左の高さにすでに差がある

石山さんらは、**ヒト胎児初期の後腎(将来の腎臓)**に注目し、右と左の高さの違いを定量的に解析しました。その結果、成人では右腎が左腎より低いことで知られるのに対し、胎児初期にはむしろ右後腎の下極が左より高いことを明らかにしました。

ヒトの後腎、すなわち成体の腎臓になる器官は、発生初期には仙骨レベルの後腹膜に現れ、その後、成長に伴って相対的に上方へ移動していきます。これまでの研究から、胚子期の後腎は左右が互いに近く、下極は大動脈分岐部や臍動脈の近くに位置することが分かっていました。しかし、右と左の後腎の高さに差があるのか、あるとすればそれがいつ生じるのかについては、十分な情報がありませんでした。

そこで本研究では、Carnegie stage 19〜23のヒト胚子15例と、頭殿長(CRL)33.5〜83.5 mmのヒト胎児15例、計30例を対象に、7テスラMRI位相コントラストX線CTを用いて後腎を三次元的に再構築しました。そして、第12胸椎から第5腰椎を基準とする座標系を設定し、後腎の上極・下極の位置と**縦径(上極から下極までの長さ)**を左右それぞれについて定量的に評価しました。

その結果、後腎の縦径は発育に伴ってほぼ直線的に増加しましたが、右と左のあいだに大きさの差はみられませんでした。一方で、位置には左右差が認められました。上極では右左差は有意ではなかったものの、下極では右側が左側より有意に高い位置にありました。さらにこの差を時期別にみると、胚子期には有意差はなく、胎児初期になって初めて有意な左右差が現れることが分かりました。

つまり、後腎は左右ほぼ同じ大きさで成長しながらも、胎児初期になると右下極が左より高い位置をとるようになることが示されました。これは、成体でみられる「右腎が左腎より低い」という配置とは逆方向の特徴です。したがって、腎臓の最終的な左右差は、胎児初期の段階ではまだ完成しておらず、その後の発生過程で再編成されると考えられます。

この研究のポイント

  • ヒト胚子・胎児初期30例の後腎を三次元的に再構築し、左右の位置関係を定量評価しました。
  • 後腎の大きさに左右差はない一方、下極の高さには差があり、右が左より高いことを示しました。
  • この左右差は胚子期ではなく、胎児初期に明瞭になることが分かりました。

この結果は、後腎の位置を決める仕組みが、胚子期と胎児初期で異なる可能性を示しています。近年の研究では、胚子期には糸球体形成前で腎動脈の供給がまだ乏しく、後腎が比較的自由に「上行」しやすい一方、CRL 21〜28 mmごろに腎動脈が現れることが報告されています。こうした血管の形成が、より大きな胎児での後腎位置に影響している可能性があります。また、傍大動脈隆起の形成が、腎・副腎・生殖腺の血管系の成立に関わることも知られており、左右差の背景として注目されます。

今回の研究は、ヒト後腎の左右差を、大きさではなく位置の差として捉え、しかもその差が胎児初期に現れることを示した点に意義があります。腎臓の正常な位置変化を理解することは、腎の上行異常や位置異常の成り立ちを考えるうえでも重要です。

今後は、後腎の移動と、腎動脈、尿管、副腎、周囲血管との関係をさらに詳しく解析することで、左右差を生み出す発生メカニズムの理解が深まることが期待されます。

本研究成果は、2024年3月27日Congenital Anomalies 誌にオンライン掲載されました。


論文情報

タイトル
Height difference between the right and left metanephroi during early human fetal development

著者
Hana Ishiyama-Takara, Jun Matsubayashi, Shigehito Yamada, Tetsuya Takakuwa

掲載誌
Congenital Anomalies

公開日
2024年3月27日

DOI
https://doi.org/10.1111/cga.12565


ひとこと紹介

ヒトの腎臓は発生初期に骨盤付近から上方へ移動します。本研究では、胎児初期の後腎を三次元的に解析し、成人とは逆に、右側の下極が左側より高いことを明らかにしました。腎臓の正常な位置決定を理解するための重要な基礎データです。