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第53回日本先天異常学会学術集会で発表

2013年7月21日(日)-23日(火)(大阪)

ポスター

ヒト胚子期における消化管の初期形成と分化 上野沙季

ヒト胚子外表写真を用いたカーネギーステージ(CS)分類判定支援装置の作成 尾関舞美

ヒト胚子期における肝臓の形態形成異常の解析 金橋徹

ポスター、口演

ヒト胚子を用いた側脳室脈絡叢の解析 白石直樹(セレクテッドポスター)

より高解像度の立体情報取得を-PF共同利用実験-

私たちはMR顕微鏡を用いて得られた3次元情報を解析し成果を報告して来ました。そのMR顕微鏡の解像度は最高で35μm/pixel程度で、MRIの技術による撮像の最先端といえます。しかしながら、胚子期の初期や、個々の胚子の器官レベルの異常の有無等の検討には、さらに高解像度な撮影法が必要になります。 そこで、われわれは、共同研究者の山田博士、米山博士らが開発をすすめ成果をあげている干渉計を利用した位相コントラストX線撮像法を用いて、ヒト胚子の撮像をより積極的に進めていくことにしました。同法は、従来の吸収コントラスト撮像法に比べて感度が約1,000倍高く、軽元素からなる試料を高密度かつ高空間分解能で三次元観察できるため、生物や医学試料、及び各種有機 材料の定量解析などへの応用が期待でき、実際、9μm/pixelという、非破壊的三次元イメージング法の分野では 世界最高レベルの解像度を達成しているそうです。本手法を適応することで1)詳細な形態診断が可能になることにより、これまで解明されていなかった胚子期の先天異常の再評価を行うことができる、2)現在知られる先天異常発生の病理を知る手がかりとなる他、新たな疾患の発見の可能性がある。 3)これまで、ほとんどが原因不明とされてきた妊娠初期流産についての原因の一端が示せる可能性がある、等多くの成果が期待出来ます。

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H25年度”次世代医療を語る”

次世代の医療は、医学研究科だけでなく、さまざまな分野の学生が担って行く可能性があります。今回は、その代表として理工学、細胞生物学、地域・社会学からのアプローチを取り上げ、医療の動向を議論したいと思います。本プログラムを聴講した様々な分野の学生が、次世代の医療に繋がるヒントを得て、思いもかけない連携が生まれるかもしれません。それは、この上なく喜ばしいことです。

■ 研究科横断型プログラムについて(外部リンク;京都大学HP内)

■ 研究科横断型プログラムについてのポスター.pdf

理工学、細胞生物学、地域・社会学の3領域からの医療への取り組みを専門家に紹介していただき、討論をします。

10/2.  杉本 直三 (人間健康科学系専攻:教授)

画像処理・解析による診断と治療の支援

10/9.  酒井 晃二 (人間健康科学系専攻:講師)

画像解析と診断との融合:MRIの例を中心に

10/16.  椎名 毅 (人間健康科学系専攻:教授)

次世代の検査機器開発;超音波と光による生体機能・性状のイメージング

 

<次世代の生体医療材料>

10/23.  岩田 博夫 (再生医科学研究所:教授)

人工材料への細胞の接着

10/30. 山本 雅哉 (再生医科学研究所:准教授)

新しいDrug delivery systemの開発

11/6.  藤林 俊介 (医学部附属病院 整形外科:講師)

生体活性チタンを用いた新しい骨関節疾患治療

 

<次世代の細胞治療>

11/13.  前川 平 (医学部附属病院 輸血細胞治療部:教授)

京都大学における細胞治療・再生治療開発への挑戦

11/20.  仙石 慎太郎 (細胞-物質統合拠点:准教授)

幹細胞の品質評価・安定培養技術とイノベーション

12/4.  門脇 則光 (医学部附属病院 血液・腫瘍内科:准教授)

がん免疫療法としての細胞療法

12/11.  細田 公則 (人間健康科学系専攻:教授)

糖尿病、肥満症、メタボリックシンドロームの次世代医療

 

<医療のグローバル化>

12/18.  山田重人 (人間健康科学系専攻:教授)

次世代の出生前診断

12/25.  伊藤 達也 (医学部附属病院 探索医療センター:助教)

治験、臨床試験を実施する際の行政との関わり

1/8.  山田 実 (人間健康科学系専攻:助教)

転倒予防を通した新たな地域との関わり

1/22.   宮野 公樹 (学際融合教育研究推進センター:准教授)

新しい医療のための異分野融合ダイナミクス

1/29.  総括

 

“咽頭胚期” (CS12) の類似性とその意義

ヘッケルの”有名”な発生と進化の教科書の図より
この図は”でっちあげ”の図とも言われている

脊椎動物は、発生の中途で極めて似た形態をとる時期があります。この時期から僅かに発生が進むだけで、それぞれの胚は外観をかえ、その成人の姿を容易に推察できるようになります。ヘッケルが「ある動物の発生の過程は、その動物の進化の過程を繰り返す形で行われる」、いわゆる反復仮説を唱えたのもこういった観察に基づくものでした。ヘッケルの反復説が19世紀当時、大きな注目・支持を集めた理由は、個体発生と系統発生の間にあった多くの観察事例とその傾向を、非常にシンプルに説明するようにみえたからでしょう。

この類似の形態はいわゆる“咽頭胚期”と言われる時期に相当します。頭部、尾部があり、その間が分節化した構造をもつこと、この頭尾軸に沿って、神経管、消化管があること、心臓、鰓孔があることなど…この形態は、多様な脊椎動物の共通項を抜き出したものといえるかもしれません。この類似性の高い段階をPhylotypic stageといいます。

どうして、こんなに似ているのでしょうか。それは、脊椎動物がこの時期に体の構成”body plan”の概要を決定するからで、進化的に変更が効きにくかったからだと言われています。最近の遺伝子の発現パターンをみた研究では、body planに関連した重要な遺伝子が、この時期多く発現し、その発現パターンは種間で驚くほど類似していることが示されています。このように動物が個体発生を行う際、その発生中期に進化的な変更を最も加えにくい時期が存在するという考えを発生砂時計モデルといいます。

ところで、この咽頭胚期ですが、ヒトではCS12に相当すると考えられられます。ヒトのこの時期より若い時期の胚についての研究は、進んでいるとは言えません。受精28日未満の時期であり、妊娠そのものが自覚できていない時期であること、3mm程度と非常に小さいこと、個体の形状が保持しにくいことなどの理由で、解析個体が得にくく、解析も困難だったからです。私たちは、組織連続切片をデジタル化し、最新のコンピュータ、ソフトウエアを使用して、この時期の胚子の研究にも取り組んでいます(22 Ueno et al)。

22. Ueno S, Yamada S, Uwabe C, Männer J, Shiraki N, Takakuwa T, The digestive tract and derived primordia differentiate by following a precise timeline in human embryos between Carnegie stages 11 and 13, Anatomical Rec 2016,  299, 439-449, DOI: 10.1002/ar.23314s,  (概要)