卒業研究発表会(前半; 大里さん)
卒業研究発表会(前半)が行われました。(2025.12.25, 26, 第7講義室)
大里さんが発表しました。
大里美和: 拡散テンソル画像を用いた両大血管右室起始症ヒト標本における心筋走行解析

正常なヒト左心室壁では、心筋線維は壁内側で右らせん、中間層では平行、外層では 左らせんに走行していることが知られており、Helix angle(HA:心筋線維走行角 度)と呼ばれる心筋線維の方向性を評価する指標として用いられる値が、内膜側で正 の角度、外膜側で負の角度という特徴的な傾斜構造を示すことが報告されている。ま た、正常なヒト右心室壁では、解剖学的に内層で縦方向の線維、外層で円周方向の線 維が走行していると言われている。近年、内臓逆位やファロー四徴症などの先天性心 疾患を有するヒト心臓において、この心筋線維走行が正常とは異なることが報告され たが、両大血管右室起始症(double outlet right ventricle:DORV)における心筋線 維走行の特徴は明らかになっていない。そこで本研究では、DORV における心筋線維 走行を明らかにすることを目的として、東京女子医科大学が保有する正常心 1 例およ び DORV 症例 4 例のヒト心臓標本の拡散テンソル画像および T1 強調画像を取得し、 心筋線維の走行の解析を行なった。各標本の拡散テンソル画像より、左心室および右 心室の中層部における中隔、前壁、後壁の HA を算出し、心室壁の内膜側から外膜側 における変化を観察したとともに、各部位の壁厚を測定した。標本の保存期間や切開 の有無などの構造的影響を考慮しつつ、左心室では左心室内腔下端と僧帽弁入口を結 ぶ直線を軸とし、その軸に対して垂直に心臓横断面を定め、心筋線維がその横断面と なす角度、つまり HA を算出した。右心室についても、右心室内腔下端と三尖弁入口 を結ぶ軸を設定し、同様に HA を算出した。正常心左心室では左心室内壁から外壁に かけて、HA が+84 度から−72 度に、正常心右心室では右心室内壁から外壁にかけ て、HA は+88 度から-29 度になめらかに変化していた。一方、DORV 標本では、左 心室の HA の変化の範囲が比較的狭く、最小のものでは HA が 0 度から-41 度に緩や かに変化していた。DORV 標本の右心室でも同様に、正常心と比べて HA の変化範囲 が狭く、最小のものでは−8°から−34°に変化していた。これらの結果から、DORV で の心筋線維走行が正常心とは異なることが明らかとなった。これは、内臓逆位やファ ロー四徴症以外の先天性心疾患においても心筋線維の走行角度が正常心とは異なる可 能性を示す。当日はさらなる詳細な解析データを加えて報告する。

