2025年度; 修士論文概要
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2025年度; 修士論文概要

33.Three-dimensional analysis of the mandible and tooth primordia at the early human fetal period
ヒト胎児期初期における顎と歯胚の三次元解析 青江 春菜

【背景・目的】ヒト胎児における歯胚の発生機序については多くのことが明らかになっているものの、歯胚列弓の形態変化や上下歯胚列弓どうしの位置変化に関する研究は十分でない。また上下の顎との成長の関係性も明らかになっていない。本研究では胎児期初期の歯胚形成における位置変化を明らかにすることを目的とする。

【対象・方法】京都大学大学院医学研究科附属先天異常標本解析センター及び島根大学医学部解剖学講座が所有するヒト胎児標本38例を対象とした。これらのMRIデータより歯胚および周辺組織の立体再構成像を作成し、その再構成像をもとに1)再構成像の観察2)再構成像の定量的解析、3)プロクラステス変換と主成分分析、4)男女差の検討を行った。

【結果】1) 再構成像の観察: 歯胚では上下の切歯・犬歯歯胚において、高さの差が観察された。上顎骨・下顎骨では頭殿長(Crown-rump length;CRL)の大きい個体でより詳細に観察できた。メッケル軟骨はCRLが小さい個体で全体を観察でき、大きい個体ではオトガイ部から消失する様子が観察された。

2) 立体像の定量的解析: 歯胚体積、歯胚重心間距離ではCRLと強い相関を示した(R >0.9)。歯胚重心間角度では上下の乳中切歯中点-左右第二乳臼歯間角度でCRLと相関を示した(R >0.5)。

3) プロクラステス変換と主成分分析:プロクラステス変換により正規化した全標本の上下歯胚重心に対し主成分分析を行った結果、第一主成分の寄与率は48.6%であった。この際上歯胚に対し下歯胚が後退し、乳犬歯-第一乳犬歯間の距離が相対的に短くなる変化がみられた。女子のみ、男子のみの集団で主成分分析を行った結果、第一主成分の寄与率はそれぞれ51.4%、56.9%であった。形態変化は全標本で行った際と似た結果を示したが、女子集団では臼歯の側方移動がより顕著にみられた。

4)男女差の検討: 重回帰分析によって男女差の有無を検討した結果、歯胚重心間距離では下顎乳中切歯-乳側切歯間距離など4項目で男女差がみられた。また下顎左乳側切歯-右乳側切歯間距離など4項目で頭殿長と性別の交互作用項に有意差がみられた。歯胚体積では上顎乳中切歯体積で男女差がみられた。歯胚間角度では下顎左第二乳臼歯-乳中切歯中点-右第二乳臼歯間角度など2項目でCRLのサブグループ(CRL<90mm, CRL≧90mmの2グループ)と性別の交互作用項に有意差がみられた。プロクラステス変換後の歯胚重心間距離では下顎左第一乳臼歯-右第一乳臼歯間距離など2項目でCRLのサブグループと性別の交互作用項に有意差がみられた。

【結論】ヒト胎児MRIから上下歯胚および顎の立体再構成を行い、歯胚間距離、体積といった成長の指標を定量化することができた。またプロクラステス変換と主成分分析を通し、歯胚列弓の形態変化の特徴を取り出すことができた。

32.Change in morphology of the ganglionic eminence during the human embryonic and early fetal period
ヒト胚子期および胎児期初期におけるGanglionic eminenceの形態変化 熊谷 美優  

【対象・方法】本研究の対象は、京都大学大学院医学研究科附属先天異常標本解析センターが保有する京都コレクションのヒト胚子標本13例 (Carnegie stage (CS) 19 ~ 23)、島根大学医学部解剖学講座が保有するヒト胎児標本17例 (頭殿長 (Crown rump length, CRL) 34.0 mm ~ 129.3 mm) である。これらのMR画像および位相CT画像をもとに、GEおよび周辺構造物の①立体化、②体積、長さ、厚さ等の定量的解析を行った。

【結果】①GEおよび周辺構造物の立体化:GEはCS20から発生が確認された。また、CRL 34.0 mm 以前の個体ではGEの原基であるMedial ventricular eminence (MVE) とLateral VE (LVE) が隆起しておりその境界が溝として確認されたが、CRL 48.5 mm 以降の個体では隆起形状が見られなくなり、境界溝も消失していた。一方で、原基の境界溝が消失した後も、GEの前方部は内側部と外側部に分かれた形態を呈しており、前方内側部 (Medial ganglionic eminence: MGE)、前方外側部 (Lateral GE: LGE)、後方部 (Caudal GE: CGE) に区分できた。また、MGE領域と間脳の位置関係に着目すると、CRLの増大に伴ってそれらの距離が離れるように観察された。②GEおよび周辺構造物の定量的解析:GEの体積はCRLの増大に伴って増加した。GEの前後方向および頭尾方向の長さはCRLの増大に伴って伸長したが、側脳室や大脳は前後方向に長さがより伸長する傾向を示した一方で、GEは特に胎児期においてはその傾向が見られなかった。GEの各領域の長さはCRLの増大に伴って伸長した。前交連を通る冠状面におけるGEの幅および厚さは、すべての個体において厚さより幅の方が大きく、それぞれCRLの増大に伴って伸長した。GEの各領域における厚さを可視化すると領域ごとに厚さに違いが見られ、その最大値はCRLの増大に伴って増加した。

【結論】これまで研究がなされていなかった胚子期から胎児期初期におけるGEの三次元再構成像を作成し、その形態的特徴や形態変化を明らかにすることができた。また、周辺構造物もあわせて立体化することで、GEとの関係性を示すことができた。

31.Morphogenesis of the foot and ankle joint in the human embryonic and early fetal period
ヒト胚子・胎児期初期における足部・足関節の形態形成 倭 友希

 【序論】胚子期後期から胎児期初期にかけて、ヒトの足根骨や足関節の骨の位置関係や形態は成人と大きく異なる。しかし、従来の研究は組織切片に基づく二次元的解析が中心であり、立体構造の評価には限界があった。本研究の目的は、①足部の形態変化について、隣接する関節面の傾きから足部の各セグメントの形態変化を三次元的に捉えること、②足関節の形態変化について、関節面の傾きから鉛直方向の骨配列の獲得過程を評価することである。

【方法】ヒト胚子及び胎児の固定標本26例を分析対象とした。MR画像や位相X線CT画像から右足の足根骨、中足骨、下腿骨の立体像を作成し、立体像の観察、各骨の体積及び長さの計測を行った。さらに、ランドマークを設定して、足軸、左右軸、鉛直軸を3つの軸とする3次元座標系を構築した。定義したLisfranc関節、Chopart関節、Talocalcaneal関節、距脛関節の関節面及び下腿骨の断面について、それぞれ長軸方向と法線ベクトルを算出した。これらの結果を基に、①足部の形態変化及び②足関節における鉛直方向の骨配列の獲得過程を定量的に解析した。

【結果】①足部の形態変化について、足軸、左右軸、鉛直軸を回転軸とした各関節の回転を定量化した。足軸を回転軸とした場合、Talocalcaneal関節・距頸関節が時計回りに回転した。左右軸を回転軸とした場合、CS20~21ではLisfranc関節の反時計回りの回転が、CS23以降ではChopart関節の時計回りの回転が認められた。鉛直軸を回転軸とした場合、Lisfranc関節・Chopart関節はいずれも時計回りに回転した状態を維持した。これらの関節面の角度変化から足部の各セグメントの形態変化を捉えると、後部は足軸を回転軸として時計回りに連続的な回転を示し、前部・中部は鉛直軸を回転軸として時計回りに回転した(外転)状態を維持した。CS23以降では、中部・後部は左右軸を回転軸とした時計回りの回転が認められた。②足関節の形態変化について、足軸、左右軸、鉛直軸を回転軸とした解析においても、足底面に対する下腿骨の角度は成長に伴う変化が認められた。また、足軸を回転軸とした解析において、Talocalcaneal関節の角度変化や、脛骨の遠位関節面と下腿骨の断面のなす角度の変化が見られた。以上の結果より、足軸を回転軸とした解析で、鉛直方向の骨配列の獲得過程が認められ、その過程に関与する要因は距骨及び脛骨遠位部の形態変化であると示唆された。

【結論】本研究では、MR画像や位相X線CT画像を用いて足部及び足関節の立体像を作成し、関節面の角度を三次元的に解析することによって、CS20から胎児期初期までの足部の各セグメントの形態の経時的変化を三次元的に捉えることができた。また、同時期の足関節の形態変化について、関節面の角度から鉛直方向の骨配列の獲得過程を三次元的に評価できた。