第24回日本心臓血管発生研究会で発表しました
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第24回日本心臓血管発生研究会で発表しました

第24回日本心臓血管発生研究会で発表しました(2025.11.28-29, 淡路島)

藤井瀬菜, 磯谷菜穂子,今井宏彦, 米山明男, 山田重人, 高桑徹也:ヒト胚子期および胎児期における静脈管の三次元的解析と血流シミュレー ションの検討
大里美和、藤井瀬菜、今井宏彦、稲井慶、八代健太、小田晋一郎、高桑徹也:拡散テンソル画像を用いた両大血管右室起始症のヒト心臓標本における心 筋走行解析
高桑 徹也:ヒト中腸領域の形成:生理的臍帯ヘルニア形成から解消まで (教育講演)
三村由依, 藤田周平, 本宮久之, 稲井慶, 高桑徹也, 小田晋一郎, 八代健太. 位相コントラスト CT による心臓刺激伝導系の立体的走行解析

8. ヒト胚子期および胎児期における静脈管の三次元的解析と血流シミュレーション の検討

藤井瀬菜1), 磯谷菜穂子1),今井宏彦2), 米山明男3), 山田重人1), 4), 高桑徹也1)

1)京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 2)岐阜大学医学部附属量子医学イノベーションリサーチセンター 3)九州シンクロトロン光研究センター 4)京都大学大学院医学研究科附属先天異常標本解析センター

出生前のヒトにおける血液の酸素化は肺ではなく胎盤で行われており、肺血流量が非 常に少ない。そのため、酸素が豊富な血液を効率よく全身へ届けるための短絡経路を 含む胎児循環を有する。短絡経路の1つである静脈管は、臍静脈から下大静脈につな がる血管であり、酸素が豊富な臍静脈血を心臓へ送る重要な血管である。この静脈管 は、Carnegie stage (CS)14(受精後約4週)頃に、右卵黄嚢静脈と左臍静脈の吻合 枝の1つが主流となることで形成される。受精後11週以降には、胎児エコーにて臍静 脈側が細く、下大静脈側が広いトランペット様の形態として観察される。受精後11~ 13週には臍帯血の約54%が静脈管によりシャントされることがエコーでの計測によ り示されているが、器官形成期である受精後8週までの臍静脈から静脈管に関する詳 細な形態変化に関する報告はなく、血流配分も明らかではない。血管の形態変化に伴 って血流配分が変化し、周辺臓器の形成に影響する可能性がある。本研究は、ヒト胚 子標本(CS15~23)の位相CT画像18例およびヒト胎児標本(頭殿長33~97mm)の MRI画像11例の計29例を対象として、臍静脈、門脈、静脈管、下大静脈の立体像を 作成し、1立体像の観察、2血管内径と特異的形状の可視化、3胚子期を対象とした 血流シミュレーションによる血流配分の算出をおこなった。1立体像の観察:臍帯静 脈は臍帯輪から肝臓へ向かって走行し、肝臓内の方形葉と右葉の内下隅でいくつかの 分枝を生じた。肝内臍帯静脈はさらに肝臓内を近位方向へ走行し、肝臓尾状葉の尾側 端で三股に分岐した。この間、臍帯静脈の分枝は見られなかった。これらは例外なく CS15からCRL97mmまで観察された。2血管内腔の大きさと形状の可視化: CS15~17では臍帯静脈の臍帯輪周囲が最も太いが、個体が成長すると肝臓内の部分 や下大静脈の部分へと最大内腔を持つ部分は変化した。臍帯静脈はCS21頃を境に内 腔が不均一で凹凸がある形態から比較的円形で均一な形態へ変化した。3血流シミュ レーションによる血流配分の算出:CS15およびCS16において、臍静脈から流入した 臍帯血の63.4~100%が静脈管を通り心臓へ流れていた。CS17からCS19にかけて心 臓への血流配分は56.7%から3.3%まで減少し、残りの臍帯血は肝臓の右葉と左葉で ほぼ等分された。CS21では42.9%の臍帯血が心臓へ還流していた。本研究は、ヒト 妊娠初期における臍帯から心臓までの静脈系短絡路について、経時的な形態変化を明 らかにし、この形態変化に伴う血流配分の変化を示した。

13. 拡散テンソル画像を用いた両大血管右室起始症のヒト心臓標本における心筋走行 解析

大里美和 1),藤井瀬菜 1),今井宏彦 2),稲井慶 3),八代健太 4),小田晋一郎 5), 高桑徹也 1)

1) 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻
2) 岐阜大学医学部附属量子医学イノベーションリサーチセンター 3) 東京女子医科大学循環器小児・成人先天性心疾患科
4) 京都府立医科大学大学院医学研究科生体機能形態科学
5) 京都府立医科大学大学院医学研究科心臓血管外科学

正常なヒト左心室壁では、心筋線維は壁内側で右らせん、中間層では平行、外層では 左らせんに走行していることが知られており、Helix angle(HA:心筋線維走行角 度)と呼ばれる心筋線維の方向性を評価する指標として用いられる値が、内膜側で正 の角度、外膜側で負の角度という特徴的な傾斜構造を示すことが報告されている。ま た、正常なヒト右心室壁では、解剖学的に内層で縦方向の線維、外層で円周方向の線 維が走行していると言われている。近年、内臓逆位やファロー四徴症などの先天性心 疾患を有するヒト心臓において、この心筋線維走行が正常とは異なることが報告され たが、両大血管右室起始症(double outlet right ventricle:DORV)における心筋線 維走行の特徴は明らかになっていない。そこで本研究では、DORV における心筋線維 走行を明らかにすることを目的として、東京女子医科大学が保有する正常心 1 例およ び DORV 症例 4 例のヒト心臓標本の拡散テンソル画像および T1 強調画像を取得し、 心筋線維の走行の解析を行なった。各標本の拡散テンソル画像より、左心室および右 心室の中層部における中隔、前壁、後壁の HA を算出し、心室壁の内膜側から外膜側 における変化を観察したとともに、各部位の壁厚を測定した。標本の保存期間や切開 の有無などの構造的影響を考慮しつつ、左心室では左心室内腔下端と僧帽弁入口を結 ぶ直線を軸とし、その軸に対して垂直に心臓横断面を定め、心筋線維がその横断面と なす角度、つまり HA を算出した。右心室についても、右心室内腔下端と三尖弁入口 を結ぶ軸を設定し、同様に HA を算出した。正常心左心室では左心室内壁から外壁に かけて、HA が+84 度から−72 度に、正常心右心室では右心室内壁から外壁にかけ て、HA は+88 度から-29 度になめらかに変化していた。一方、DORV 標本では、左 心室の HA の変化の範囲が比較的狭く、最小のものでは HA が 0 度から-41 度に緩や かに変化していた。DORV 標本の右心室でも同様に、正常心と比べて HA の変化範囲 が狭く、最小のものでは−8°から−34°に変化していた。これらの結果から、DORV で の心筋線維走行が正常心とは異なることが明らかとなった。これは、内臓逆位やファ ロー四徴症以外の先天性心疾患においても心筋線維の走行角度が正常心とは異なる可 能性を示す。当日はさらなる詳細な解析データを加えて報告する。

ヒト中腸領域の形成:生理的臍帯ヘルニア形成から解消まで

高桑徹也
京都大学医学研究科 人間健康科学系専攻基礎系医療科学講座 教授

ヒト形態形成を正しく知ることは、先天異常の病態解明、早期発見、精度 向上につながり重要である。弊研究室では、最新の高解像度 MRI, CT 等を用い

て高品質の胚子胎児群(おもに京都大学先天異常標本解析センター保有)を多 数撮像し、体系的に展開する研究を継続してきた。デジタルデータは空間的な 形態把握がしやすく、複数を同時に観察可能、空間座標を数値化し定量的解析 やより複雑な解析に応用可能、などの特長があり、20 世紀前半に集積された 古典的なヒト形態学では成し得なかったことが可能になった。今回の講演で は、研究成果の中で、受精後約 5-10 週に中腸領域にみられる消化管が一時的 に腹腔から臍帯内に脱出する現象(生理的臍帯ヘルニア;PUH) の形成から解 消までの解析結果を教示する。臍帯、腹腔間のダイナミックな中腸の位置変 化、伸長に伴う小腸ループ形成、回転、と中腸の形態変化や移動は立体的に複 雑であり、また実験動物とは様相が異なることから、今なお教科書の記述は精 確性に欠ける。例えば、下記のようなことが判明した。

PUH 形成期
1)肝臓に押し出されて PUH が発生するわけではない

2)中腸はやみくもにループ形成をするのではない 3)中腸は上腸管膜動脈を中心に 90 度回転するわけではない

中腸の帰還期

4)中腸は短時間では腹腔内に帰還しない 5)中腸は臍帯輪でループを解かずに通過することはない 6)中腸は帰還時に 180 度回転しない
7)回盲部は PUH の最先端でも帰還時の最後尾でもない

帰還様式や動力についての定説のほとんどは、消化管や脈管系への加圧、 張力を伴った短期間の移動を想定しており、「安全な帰還」という観点が欠落 する。帰還は時間をかけて慎重に行われ、狭小な臍帯輪を通過する際の血流障 害や組織損傷は、軽微であっても消化管閉塞や帰還後の配置の異常の病因とな るであろう。最後に、腸管に力が加わらない安全な帰還が可能な “wrapping model”を提唱する。